児島市民病院の院長に就任 江田良輔氏インタビュー 温かな医療を提供 内科体制整え経営安定図る

掲載日:2009-04-18/紙面:山陽新聞朝刊/掲載:26ページ

 院長人事をめぐる内科医の大量退職に端を発し、産婦人科の分娩(ぶんべん)受け入れ停止など、昨年度は混乱が相次いだ倉敷市立児島市民病院(倉敷市児島駅前)。一日付で新院長に就任した江田良輔氏に、診療体制や経営の再建に懸ける抱負を聞いた。(美濃政友)

 ―児島市民病院では、一年もの長期にわたって混乱が続いていた。赴任を決めた理由は。

 岡山大医局からの強い要請がきっかけ。十五年に及ぶ前任地での勤務で築いた人脈や患者との信頼関係を捨てることに戸惑いはあった。
 ただ、児島市民病院は、地域の人口規模、立地など非常に恵まれている病院。二〇〇七年度以前の数年間は黒字で推移しており、医師の確保さえできれば十分 やっていけると考え、決断した。病院の基本理念である安心、安全で人間味あふれる温かな医療を提供し、市民に信頼される病院としての役割を継続的に果たし ていける体制を築きたい。

 ―診療体制の縮小により、〇八年度六億一千万円、〇九年度は二億七千万円の赤字が見込まれている。経営改善に向けた具体的な方策は。

 児島市民病院では、もともと地元医師会との連携が強い。市民病院に求められる医療内容を分析し直すとともに、全国的にも早い一九九六年に導入した、地元医師が主治医を務められる開放病床の効率的な運営を図る。
 救命救急センターでの急性期医療を受けた患者を積極的に受け入れられるようリハビリテーション部門の強化にも取り組みたい。
 今回、私を含め岡山大から派遣された三人の内科医は呼吸器とがんが専門。この分野では高度先進医療を提供できる自信はある。医療機関間の連携の一環として、通院でがんの化学療法が受けられる外来化学療法室の開設も考えている。


 ―分娩受け入れを中止している産婦人科をはじめ、医師確保は容易ではない。

 一人で年間二百例以上の出産を扱う前任までの体制は、個人の献身的な情熱や努力で成り立っていた。全国的に産婦人科医が不足する中、一人だけ確保しても 継続的な医療はできない。ただ、自治体病院である以上、産科医療は不可欠。小児科医療の充実も最優先課題の一つであり、伊東香織市長や岡山大と相談しなが ら、できる限り早期に産婦人科医を招き入れたい。
 内科医は、近いうちでの消化器、循環器専門の医師の派遣についても岡山大病院長から確約を得ており、幅広い対応ができるようになる。内科の診療体制が整 えば、外科、泌尿器科など他の診療科や、看護、事務も含めたチームでの医療が自然と進み、病院全体での医療の質と量が充実し、経営の安定も図れるはずだ。


 ―市民病院の将来を危惧(きぐ)する多くの市民が集まって「市立児島市民病院を守り、地域医療を考える会」を結成するなど、混乱を契機に地域医療のあり方を考える動きが住民レベルで広がっている。

 病院職員にとっては、かけがえのない支援で、感動的なことだったはず。地域に頼れる医療機関がなければ、文化的、経済的な活性化にも影響を及ぼすのは明 らか。私たちの派遣も、みなさんの情熱が倉敷市長に届き、市長の決断力と行動力が、岡山大病院長の決断を生んだ。これからは地域主権の時代。市民活動が大 きく行政を動かすようになる中、職員一同、気を引き締めて頑張っていく。



えだ・りょうすけ 1984年、岡山大医学部卒業。中国四国地方の病院で研修を積んだ後、米・クレイトン大免疫・アレルギーセンターに留学。92年から国 立療養所山陽荘病院(現・国立病院機構山口宇部医療センター)に勤務。前職は同センター内科系診療部長。岡山市出身。50歳。