資料6 大橋宛徳田尚二書状

資料6 大橋宛徳田尚二書状

資料6 「〔大橋宛徳田尚二書状〕」(大橋紀寛家文書別4-29-7)

資料6-1

資料6-2

資料6-3

翻刻

一筆致啓上候,向暑御座候得共,先以
被成御揃弥御安静被為 在奉
恐賀候,且先達而ゟ何角相伺度一寸
参館可仕之処,銀札一条ニ付而者色々
御配慮被下候由,一件中罷出候而も
却而人江御迷惑ニも思召候半と
差ひかへ候内雨天相続キ,既去ル
朔日ゟ前代未聞共可申候大水
所々堤等切れ込領分中之愁傷
大方ならつ,乍去川辺川東通
村々者別而之大変ニ御座候,流家・
潰家・死人等も有之由,岡田・
川辺者皆々罷出防方いたし
候付,先ツ無難ニ御座候,乍去私共ハ
丘水ニ而四方弁天与相成,出仕も
去ル廿九日ゟ五日迄船ニ而行来
いたし候,御憐察可被下候,いつれ
不遠内参上御目通可申上候間
入水中必々御出之儀者御断
申上候,此段不悪御承知可被下置候

一 蒙命罷在候,御大小之御縁出来

いたし申候間,差上申候,御落手
可被下候,此段も参館何角可申上候

一 江府旦那ゟも申達候儀御座候間

呉々も参上委細可申上候,必々御出
之儀者御断申上候,其訳入水
中,大取込未タ二階住居ニ御座候,
御憐察可被下候

一 過日者岡府江御出被成候由,雨天雨天

御難渋可被成候,実ニ申上度御事
山々御座候,異国船等御手当之
実況も御咄し可申上候,乍憚其
皆様江宜敷被仰上可被下候,
早々,恐惶謹言

六月五日認  徳田 尚二


大橋様

尚以不順之季候,御自愛可被成候,
呉々も今般之大水,所々色々ニ
評いたし候三備之洪水ニ御座候歟,
実況難相知御座候,早々已上
追而勝之丞様江も宜御鶴声可被下候,早々已上

読み下し

一筆啓上致し候(そうろう)。向暑御座候えども,まず以てお揃い成られいよいよ御安静あらせられ恭賀奉(たてまつ)り候。かつ先達てよりなにかと相伺いたく一寸(ちょっと)参館仕(つかまつる)べきのところ,銀札一条については色々ご配慮くだされ候由,一件中罷(まか)り出候てもかえって人へ御迷惑にも思し召し候はんと差ひかへ候うち雨天相続き,既に去る朔日(さくじつ)より前代未聞とも申すべき候大水所々堤等切れ込み領分中の愁傷大方ならず。さりながら川辺川東通村々は別しての大変に御座候。流家・潰家・死人等もこれある由。岡田・川辺は皆々罷り出て防方いたし候につき,まず無難に御座候。さりながら私共は丘水にて四方弁天と相成り,出仕も去る二十九日より五日まで船にて行来いたし候。御憐察下さるべく候。いずれ遠からざる内参上お目通申し上ぐべく候間,入水中かならずかならず御出の儀はお断申し上げ候。 この段悪しからず御承知下し置かるべく候。

一 命を蒙り罷りあり候。御大小の御縁出来いたし申し候間,差し上げ申候。お落手下さるべく候。この段も参館なにかと申し上ぐべく候。

一 江府旦那よりも申し達し候儀御座候間,くれぐれも参上委細申し上ぐべく候。かならずかならず御出の儀はお断り申し上げ候。その訳入水中,大取込未だ二階住居に御座候。御憐察下さるべく候。

一 過日は岡府へお出成され候由,雨天雨天御難渋成さるべく候,実に申し上げたき御事山々御座候。異国船等御手当の実況も御咄し申し上ぐべく候。憚りながらその皆様へよろしく仰せ上げられ下さるべく候。早々,恐惶謹言。

六月五日認  徳田 尚二


大橋様

なおもって不順の季候(きこう),御自愛なさるべく候,くれぐれも今般の大水,所々色々に評いたし候三備の洪水に御座候か,実況相知り難く御座候,早々以上。追て勝之丞様へもよろしく御鶴声下さるべく候,早々以上。

意訳

簡単な手紙を差し上げます。暑さに向かう時期ですが,まず以てお揃いでますます御安静でいらっしゃることをお祝いします。先日からなにかと相伺いたくちょっと訪問すべきところ,銀札の件については色々ご配慮くだされたとのこと,その件が継続中なので参上してもかえって人へ御迷惑にもお思いになるだろうと差控えているうち雨天が続き,既に去る朔日(1日)より前代未聞ともいうべき大水で所々堤など切れ込み領分中の嘆き悲しみは並大抵ではありません。しかしながら川辺川東通りの村々はとりわけ大変です。流家・潰家・死人などもあると聞きます。岡田・川辺は皆々出て防いだので,まず無難でした。しかしながら私共は四方が水で池の中に祀られた弁天様のようになり,出仕も去る29日から5日まで船で行来しています。同情してお察しください。いずれ遠からず参上してお目にかかり申し上げます。水の中に入っているので御出のことは固くお断り申し上げます。このことは悪しからず御承知ください。

一 命令を受け御大小の御縁ができたので差し上げます。お落手下さい。このことも訪問して何かと申し上げます。

一 江戸の旦那からも通知されたことがあるので,念を入れて参上し詳しい事情を申し上げます。御出のことは固くお断り申し上げます。その訳は水の中に入っており非常に忙しくまだ二階に住んでいます。同情してお察しください。

一 過日は岡山へお出でになったと聞きました。雨天が続き困っておられるでしょう。実に申し上げたい事が山ほどあります。異国船など御手当の実況もお話しします。僭越ながら皆様へよろしくお伝えください。取り急ぎ恐れながら謹んで申し上げます。

六月五日認  徳田 尚二


大橋様

なおもって不順の時候なので御自愛ください。今般の大水は,所々で色々に論じられている三備(備前・備中・備後)の洪水でしょうか。実況はよく分かりません。取り急ぎ以上です。なお勝之丞様へもよろしくお伝えください。取り急ぎ以上です。