平成7年度(第3回)建築文化賞受賞建築物
一般建築物部門 |
”奨励賞” 「むかし下津井回船問屋」 |

人々の生活の中心であった一筋の東西道に沿って、懐かしい町並みがひっそりと
残されてきたが、”下津井節”のこの港にも湾岸道路などの開発の波が押し寄せた。
江戸の昔より、北前船がこの港に碇をおろすたびに、この港は沸き立つような賑わい
をみせていた。その積み荷を保管していたこの明治の「ニシン蔵」は、大正期の
頃からは縫製工場に利用されていた。
老いも若きも、土地の男たちが威勢よく立ち働いていた蔵、ここ「蔵ほーる」を訪れる
人々は、太い柱や丸太梁の小屋組屋根の下、北前船のロマンに思いを馳せ、
瀬戸内の小魚で・・・ 下津井港はヨはいりようて出ようてヨ ・・・、再び活況が蘇る。
活力のあふれた「下津井」を再創出しようと生まれ変わった”問屋”は、いま全体に
やや新しすぎる感はあるが、新しさも時が経てば、ここの風土や町並みに馴染んで
くることであろう。
この再生をきっかけに、行政だけでなく住まう側からも、各々の郷土の歴史的景観
や資源を生かす試みとなって波及し、また下津井の町並みが守られ整備されて、人々
の”暮らし”がこの街道にいつまでも健やかに営まれてゆくことを、望みたい。
所在地 :倉敷市下津井1丁目7-23
建築主 :岡山県知事 長野 士郎
設計者 :(株)ベン建築設計
施工者 :(株)藤木工務店倉敷支店
概要 :資料館
木造・地上2階
敷地面積 1,089.16m2
建築面積 618.95m2
延べ面積 846.05m2
完成時期:平成6年12月