卒業や転勤など,新生活に向けて賃貸住宅を退去する人が多いこの時季は,賃貸住宅に関する相談が多数寄せられます。
退去時,借り主には原状回復義務が生じますが,これは入居時とまったく同じ状態に回復することではありません。原状回復とは,借り主の不注意や通常の使用を超える使い方が原因で発生した,住宅の損耗や傷などを復旧することです。経年変化や通常損耗による修繕費は,家賃に含まれているとされています。
○貸し主負担…日照などの自然現象や,冷蔵庫の後部壁面の黒ずみによるクロスの変色
▶破損はしていないが,次の入居者のために行う畳の表替え
▶借り主が通常の清掃をしている場合のハウスクリーニング
▶下地ボードの張り替えが不要な程度の画びょう・ピンの穴 など
○借り主負担…下地ボードの張り替えが必要なくぎ・ねじ穴
▶結露の放置により拡大したクロスのカビ・染み
▶台所や換気扇などの油汚れ,すす
▶ペットの飼育に伴う柱・壁・床の傷や臭い
▶たばこのやにや臭い など
退去時は,できる限り貸し主側の立ち会いの下で部屋の現状を確認してください。国土交通省ホームページ「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考に貸し主側と話し合い,解決が難しい場合は少額訴訟などの手続きを利用しましょう。