2024年6月の所信表明
議員の皆様、本日は、御多忙の中お集まりいただき、厚くお礼を申し上げます。
提案理由説明に先立ちまして、まず、市政を取り巻く最近の状況につきまして御説明申し上げ、次に、今後の市政に対する私の所信を述べさせていただきたいと存じます。
まず、5月26日開催の第74回全国植樹祭にあわせて、天皇皇后両陛下が真備地区を御訪問されました。沿道では多くの住民の皆様が日の丸の小旗を振り、横断幕を掲げて両陛下を奉迎しました。御視察先のまびふれあい公園では、私から両陛下に、平成30年7月豪雨災害の被災状況や復興状況、小田川合流点付替え事業が竣工したこと等の御説明をさせていただきました。そして、両陛下は、被災された方々の復興状況や治水事業について御質問されたのちに、被災地に向けて静かに黙礼されました。その後、被災者や支援者の代表の方々と御懇談され、お見舞いやねぎらいのお言葉をかけられました。両陛下が、地域の方々に寄り添ってくだ
さるお言葉やお姿から、私たちは前に向かって進んでいく大きなお力をいただきました。
また、小田川合流点付替え事業をはじめとする真備緊急治水対策プロジェクトは3月23日に竣工記念式典を開催し、関係者約550人が出席して復興の大きな節目を祝いました。この事業により治水安全度は大きく向上し、今後の住民の皆様の暮らしを支える基盤となりました。
また、復興のシンボルとして「平常時と災害時の両面で活用でき、地域の発展につながる公園」をテーマに整備を進めてきた、まびふれあい公園は、来る7月3日に開園式典を行うとともに、地域の方にも参加していただく植栽イベントや、公園の設計に参加した世界的建築家の隈研吾氏の来園も予定しています。開園後は、日常の憩いの場としての利用をはじめ、「真備・船穂総おどり」などの様々なイベントにも利用していただき、真備の賑わい創出や魅力発信の場として、活用していきたいと考えております。
また、まちづくり推進協議会の皆様と相談し、7月6日及び7日に、真備支所において、災害で亡くなられた方々を追悼するために献花台及び記帳台を設置し、献花、黙とうを捧げたいと考えております。
令和元年度から5年度まで、真備地区復興計画に掲げた治水対策や防災減災対策、生活の再建、経済活動の復興、まちの賑わいや交流創出などをはじめとした様々な取組については、被災されました皆様のたゆまぬ努力と、多くの皆様からの御支援によって、概ね計画通りに進めてくることができました。改めまして皆様に心から感謝申し上げます。令和6年度からは、復興の次の段階である創造期として、地域の新たな魅力や活力の創出など、更なる発展に向けて地域の皆様とともに取り組んでまいりたいと考えております。
次に、今議会は、私にとりまして今任期最初の定例議会となります。私は、これまでの4期16年間に、それぞれに公約に掲げた取組をはじめ、平成30年7月豪雨災害や新型コロナウイルス感染症への対応など、本市始まって以来の未曾有の経験の中、市議会や市民の皆様の御理解、御協力をいただきながら、市民福祉の向上とまちづくりに取り組んでまいりました。5期目においては、これまでの経験も踏まえて、「みらいに向かう持続可能なまちづくり」を実現するため、「災害に備えるまちづくり」「子育てするなら倉敷でと言われるまちづくり」「温もりあふれる健康長寿のまちづくり」「世界に誇れる文化・産業のまちづくり」「みらいを見据えたまちづくり」という5つの政策を推進してまいりたいと考えております。それでは、順次、御説明申し上げます。
まず、1つ目は、「災害に備えるまちづくり」です。
今年1月1日に能登半島地震が発生したのをはじめ、全国で地震が頻発するなど、南海トラフ地震の発生も予断を許さない状況です。また、風水害についても、毎年、台風や線状降水帯による豪雨被害が全国各地で発生しています。今後も、平成30年7月豪雨災害の教訓を活かした災害への備えを進めるとともに、一人ひとりの市民の皆様も、いざという時に対応できる具体的な準備をしていただくことが必要であると考えております。そのため、地区の防災活動の促進、防災教育の推進、浸水対策の強化を進めるとともに、南海トラフ地震に備えたライフライン等の耐震化推進など、倉敷市の国土強靭化に取り組むことにより、災害に備えるまちづくりを進めます。
本年度は、防災減災対策として、地区防災計画や個別避難計画の策定促進のほか、新たに玉島地区への防災備蓄倉庫の整備に着手します。これにより、児島阿津及び有城の防災備蓄倉庫とあわせ、大規模災害時には、3つの拠点から迅速に備蓄品を指定緊急避難場所等に届けられるようになります。また、防災教育の充実を図り、家庭や地域での避難体制の強化に向けて、災害に備えるため家庭に準備しておくべき非常持出品や備蓄品リストを広報紙に折り込んで各家庭に配布いたします。さらに、防災訓練の充実や消防団員の加入促進にも取り組み、また、結成から15年以上経過した自主防災組織に対して防災資機材を追加配布いたします。浸水対策として用水路の事前放流・田んぼダムの設置等に加え、樋門やポンプ場の改修を進めるとともに、水道や下水道、住宅の耐震化等を進めてまいります。令和7年夏のオープンに向けて整備中の山陽ハイツ跡地を活用した(仮称)都市防災公園及び複合施設については、指定管理者の公募を行うとともに、市民に親しまれる施設となるよう、7月1日から31日までの間、名称を募集いたします。
次に、2つ目は、「子育てするなら倉敷でと言われるまちづくり」です。
市長就任以来、「子育てするなら倉敷でと言われるまち」を一貫して掲げてまいりました。4月には、民間の経済人や研究者等有識者などで構成される人口戦略会議から地方自治体「持続可能性」分析レポートが示され、本市については、消滅可能性都市の目安となる若年女性人口減少率が、2014年の分析数値より4.7ポイント改善していましたが、これは、これまでの子育て支援策などの効果が一定程度現れてきているものと受け止めています。今後も、結婚、妊娠、出産、子育て支援の充実をはじめとして、出会いの場の提供や、職場や地域社会全体で子育てを支援していく環境の整備などに取り組んでまいります。これにより、特に若い世代の方々には、地元に愛着をもって、地元で仕事と子育てを両立してもらいたいと思います。
本年度は、妊娠期からの切れ目ない伴走型相談支援体制の充実を進めるとともに、不育症の治療に要する費用の一部助成を新たに行います。また、令和6年4月1日現在で7人まで減少した待機児童の解消に向けて、ニーズの高い0歳から2歳児の受け皿の拡大など、引き続き充実を図ってまいります。放課後児童クラブの体制充実として、支援員の負担軽減に向けて、運営事務職員の配置経費等に対する助成を行うとともに、地域との連携による学校支援や、若者の地元定着に向けたキャリア教育を推進します。また、DXを活用した学力向上支援として、中学校を対象に、AIを活用した採点支援システムを導入することで、教員が生徒に関わる時間を確保し、一人ひとりに応じた指導の充実につなげます。さらに、義務教育学校の設置、学校施設の長寿命化など教育環境の充実を図るとともに、市内在住の小・中学生に、文化・芸術に親しみ倉敷市への愛着心を養ってもらえるように、無料で文化施設等を利用できるいきいきパスポートの利用期間を、現在の土・日・祝日及び7月と8月の平日から、通年に拡大します。
次に、3つ目は、「温もりあふれる健康長寿のまちづくり」です。
人生100年時代と言われるようになってきた今日、高齢者の皆様が、健康で長生きしていただき、生きがいを持って地域で活躍していただくことが、社会の活力向上にもつながると考えております。そのため、社会活動を通じた人とつながる機会の創出、生活習慣病やフレイルの予防、スポーツの推進による健康づくりや、医療・介護体制の充実、認知症の人と共に生きる地域づくりの推進により、誰もが住み慣れた地域で、健康で充実した生活を送れる健康長寿のまちづくりを進めるとともに、複合的な課題を抱える方への支援にも引き続き取り組んでまいります。
本年度は、健康寿命の延伸につながる歯周病予防や、口腔機能の維持・向上を図るためのオーラルフレイル予防の啓発推進や、生活習慣病などの重症化予防を目的として診療情報を活用した国保加入者の保健指導の充実、また、65歳以上の方などを対象に、令和6年秋から新型コロナウイルスワクチンの定期接種を実施します。また、がん患者の日常生活の質の向上のため、ウィッグや胸部補整具の購入費用の一部助成を実施します。精神障がいのある方が、自分の体験を活かして同じ立場にある方を支えるピアサポート活動に対する支援を行います。
次に、4つ目は、「世界に誇れる文化・産業のまちづくり」です。
倉敷市は、G7関係閣僚会合を2度開催したまち、3つの日本遺産のストーリーが認定されたまちとして、文化的なまちの価値を高め、倉敷ならではの心に刻まれるMICE誘致を推進し、地域経済の活性化につなげてまいりたいと考えております。また、ものづくりのまちとして、地域産業の競争力強化を図るとともに、その特色や強みを活かして地元就職の促進につなげてまいります。さらに、国内有数の規模を誇る水島コンビナートについては、その国際的な産業競争力を高めるための支援を行うとともに、カーボンニュートラルコンビナートの取組についても支援してまいります。また、地産地消の推進として、米粉利用の普及促進による地元産米の消費拡大などにも取り組んでまいります。
本年度は、MICE誘致に向けた取組として、観光庁の「海外からのミーティング・インセンティブ旅行誘致に向けた地域連携支援事業」に官民連携で取り組むとともに、全国104の日本遺産認定地域が集う「日本遺産フェスティバル」を令和7年10月25日、26日に本市で開催するための準備を進めてまいります。また、大阪駅に直結したJPタワー大阪の「KITTE大阪」に、アンテナショップ「クラシキ」を7月31日にオープンし、倉敷市の個性と魅力を発信してまいります。倉敷物語館に隣接する阿知まち広場については、市民や観光客が交流する拠点として整備していくため、建物の耐震・改修工事を実施します。さらに、市内の事業所等で働く若者の職場定着や市内定住を目指したワークショップの開催や、中小企業の人材不足等の課題解決に向けた副業人材の活用を支援します。また、今後増加が見込まれる外国人労働者に関して市内の企業を対象に、雇用に関する実態調査を実施します。
最後に、5つ目は、「みらいを見据えたまちづくり」です。
市民の皆様が安心して暮らせ、住み続けたいと感じられる持続可能なまちづくりに向けて、ゼロカーボンシティへの取組、倉敷市公式アプリを活用した情報発信の強化や手続きのデジタル化など行政サービスの充実を図るとともに、都市機能の向上に向けて、幹線道路整備の推進、交通政策の充実、鉄道高架を見据えた倉敷駅周辺の整備推進、高梁川流域自治体との連携、行財政改革として、公共施設個別計画の推進、ふるさと納税の推進による歳入の増加や、負債の削減などに取り組んでまいります。
本年度は、ゼロカーボンシティに向けて、電気自動車、太陽光発電システムや蓄電池の導入促進のほか、公共施設のZEB化や照明LED化を進めます。DXの推進については、市のホームページをスマートフォンでも見やすくするとともに、市役所での必要な手続きや書類などをわかりやすく案内するサービスを導入します。また、公共施設個別計画の推進に向けて、児島地区における市立短期大学等の公共施設の再編整備では、DB方式で行うための民間事業者の募集及び選定を行い、令和10年4月の供用開始に向けて取り組みます。船穂公民館及び船穂憩の家の複合化、庄支所及び庄分団消防機庫の再整備では、令和7年度末の完成に向けて整備を進めます。また、PFI事業等における事業者の公募に関し、応募者数の確保と良質な事業提案がなされることを促進するため、優秀な応募事業者に対して報奨金を交付する制度を創設します。
都市機能の向上にむけた幹線道路整備の推進として、二日市曽根線のうち、起点となる国道2号から矢柄西田線までの区間(延長850メートル)について、現在、市が進めている生坂二日市線の整備とあわせて、より効果的な道路ネットワークとなるように、事業主体として整備することといたします。なお、この区間は、市が有城に整備した防災備蓄倉庫にも近く、災害時の緊急物資輸送に寄与するものと考えております。さらに、公共交通の利用促進を図るため、路線バス及び水島臨海鉄道の無料デーを実施します。
また、コロナ禍において開催することができなかった市民ふれあいトークについては、防災、地域活性化などの社会的課題をテーマに、地域で活動する団体などと市長が意見交換をする「みらいミーティング」として開催します。さらに、防災マップの作成、地域の見守り活動、買い物支援、居場所づくりなど、コミュニティ協議会が抱える重点課題の解決に向けた新たな取組に対する支援を行います。
地方は今、人口減少、少子高齢化という大きな課題を抱えながら、先の見えづらい世界情勢や、いつ起こるかわからないパンデミックや災害と隣り合わせであり、私たちの倉敷市も例外ではありません。しかし、これまで長きに渡って地域で培われてきた絆や強みを活かしながら、成長と発展に向けた取組を進めていくことで、みらいに向かう持続可能なまちの実現を皆様とともに目指してまいりたいと考えております。引き続き全力で取り組んでまいりますので、議員の皆様並びに市民の皆様の御理解・御協力を賜りますようお願い申し上げます。
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