田園の中の十字路の角に、小さな石のほこらがあり、内部に「南無濃茶大権現」の文字。 大正11年に建てられたものだ。横溝正史疎開宅の南わずか100m。 「八つ墓村」に登場し、『たたりじゃ~』と叫んだ「濃茶の尼」の名前は、このほこらから拝借したものと思われる。
濃茶のばあさん このちいさな祠(ほこら)は、江戸時代藩家老の奥方が旅路で病に苦しんだ時、茶店の老婆の親切でその地の神社に祈願し、平癒した。 帰国後、奥方は祠を建て、その神体を勧請したと伝えられ、土地の人は「濃茶のばあさん」としてまつり、供え物が絶えなかったという。 横溝正史は、この話をヒントに名作「八つ墓村」に濃茶の尼を登場させた。