倉敷市立美術館のコレクションの柱となっている池田遙邨は、文化勲章を受章した郷土出身の日本画家で、1919(大正8)年の第1回帝展(現在の日展の前身)に「南郷の八月」が入選して以来、1988(昭和63)年に92歳で亡くなるまで、この帝展・日展を主な舞台として活躍しました。また、1953(昭和28)年、後進の指導育成を目的として結成主宰した画塾・青塔社の展覧会には、1989(平成元)年の第34回展に遺作出品されるまで、毎年かかさず出品しています。
ところで、1978(昭和58)年に京都の鴨川を題材にした第10回改組日展の「川」と、1980(昭和55)年に第25回青塔社展に出品した「京都タワー」とでは、同じ京都市内の風景を描いた作品にもかかわらず、美しさへの視点が違います。当時、京都タワーは、景観との調和で古都のシンボルとして相応しくないのではないかと議論された問題作。遙邨はそのことを承知の上で、あえて青塔社展の出品作として描いており、実験的な傾向が強いようです。
このたびの展覧会では、遙邨の主な作品発表の場だった日展と青塔社展の出品作品に焦点をあてて展示します。遙邨がもっとも力を入れて制作した代表作ばかりで、当時の遙邨コレクションの中核をなすものです。この機会にゆっくりとご鑑賞ください。