「高梁川流域の起業人」第9回

「高梁川流域の起業人」第9回

「高梁川流域の起業人」新見パン工房松陰 代表 金山伸広さん


 岡山県備前市出身の金山伸広さん。パンの製造販売で起業するまで、さまざまな経験をしてきました。飲食、アパレル系の店で働いた後、大手通信業に転職。営業成績は、中四国九州エリアで売り上げトップになるほどの敏腕セールスマンでした。金山さんは「買いたいものは何でも買えましたね」と振り返ります。


 岡山市を拠点に働いていた金山さんは、結婚してほどなく妻の実家・新見市に移住します。「新見市には来たのは嫌々でした。でも、知らない子どもたちがあいさつしてくれたりして、町の良さを感じるようになりました」と金山さん。新見で何か商売がしたいと立ち上がりました。そして、新見になかったような幅広い女性に喜ばれるという場所をつくろうと考えた結果、パン店にしたそうです。


 店は新見駅そばを流れる川沿いのビルの1階にあります。生地は無添加で、国産小麦100%使用。焼き立てを提供するなど、手間やコストを惜しみません。オープンから2年経っても客が絶え間なく訪れていて、リピーターの多さが伺えます。


 しかし、パン店の忙しさは半端なものではありません。材料の仕込みから調理、営業、そして翌日の準備まで、午前3時から午後7時まで働く毎日。無理が重なり体調を崩して、1ヶ月店を休業。「懸命に働けば従業員もついてきてくれると思っていた。楽しみに来てくださっていた新見のお客さんにも申し訳なかった」と金山さん。それをきっかけに、仕事の量を減らすなど、店の持続的な営業を優先することにしました。


「地域おこし(新見おこし)」と書かれた紙を持っている金山さんの画像


 今後も新しい分野の店を出店しようと意欲を見せるものの、あくまで拠点は新見という金山さん。「新見の人が楽しめる店を増やすことが地域おこしにつながる。移住してきた人への開業支援も含めて、『新見おこし』に力を入れたい」と力を込めています。